8月18~20日 【短期課程(高校生)】地域林業実践体験合同研修会in県南地域を開催しました!

[全体概要]

くまもと林業大学校では、熊本の豊かな森林資源や林業に魅力と親しみを感じ、林業の担い手になることへの誇りと希望を感じられる人材の育成を目的に、県内の林業関係学科の高校生を対象にした体験実習、視察研修も行っています。
昨年度に続き、今夏も県南地域の八代農業高校泉分校、芦北高校、南稜高校の生徒が参加し、令和3年8月18日(水曜日)~20日(金曜日)に合同の地域林業実践体験研修会を開催しました。

初日は水俣木材市場に集合した後、午前中は開講式とオリエンテーションを行い、林業や森林組合の概要、林業大学校について説明を行いました。午後からは、生徒たちは2班に分かれ、同市場と(株)山口商店の見学を行いました。

2日目は八代森林組合に集合。午前中は室内・屋外の2班に分かれ、室内では鳥獣害対策セミナー、屋外ではチェーンソーの目立てと刈り払い機の基礎講習を実施しました。午後は、「JLC(日本伐木チャンピオンシップ)チームくまもと」のメンバーによる伐木競技の説明と実演を見学し、生徒たちも体験しました。

最終日となる3日目は、午前中にジビエ試食・処理見学とドローン操作研修を実施しました。午後からは3日間の振り返りと閉講式を行い、研修を終えました。担当者は、「今回の体験を通して、高校生に『林業はかっこいい』『やってみたい』と思ってもらえれば」と話します。林業に魅力や親しみを感じた高校生の中から、将来一人でも多くの林業従事者が生まれることを期待しています。

19日の開会式の様子
19日の開会式の様子
3校からの参加者で記念撮影
3校からの参加者で記念撮影

 

[2日目(19日)詳細]

研修2日目となる19日(木曜日)の研修会は、八代市泉町下岳の八代森林組合本所に、午前9時30分に集合。午前中の屋内研修は、「くまもと農家☆ハンター」の稲葉さんと井上さんによる鳥獣害対策セミナーを行いました。

まず、稲葉さんが県内の鳥獣被害の現状や課題、捕獲後の利活用について説明。その中でシカによる樹木の食害に触れ、「山に多様性があることで環境が守られ、山崩れなどの防止につながる」と、鳥獣害対策の必要性を強調しました。続いて、捕獲後の利活用について井上さんが、「(捕獲した鳥獣の処理には)医師に確認した処理方法やICT技術を使った個体管理、処理加工の記録取得などで安全性を確保している」と説明。捕獲した鳥獣の食肉処理数の増加や処理の簡略化を進めることで、「狩猟者人口の増加や食料自給率の課題解決にもつながる」と生徒たちに伝えました。

 

一方、屋外講習では、(有)マルユーの中丸さんがチェーンソーの取り扱いや。模型を使ってヤスリでチェーンソーの刃を研ぐ目立てについて説明しながら、(ヤスリを)押す方向などについてアドバイスを送りました。さらに中丸さんは、チェーンソーの駆動方法や安全な取り扱い方なども分かりやすく解説。生徒たちは、中丸さんのひと言ひと言に聞き入っていました。その後、3~4人のグループに分かれ、グループごとに講師の指導のもと丸太の玉切りに挑戦。また、刈り払い機の基礎講習では、エンジンの始動方法から操作の手順、刈り取る範囲やスピード、注意すべきポイントなどについて説明を行い、生徒たちは多彩な体験を通して林業現場の基礎的な仕事を学びました。

 

午後は、「JLC(日本伐木チャンピオンシップ)チームくまもと」のメンバーを講師に迎え、競技を通じて安全で正確な伐木技術を学ぶ体験実習を行いました。JLCは、伐木技術の向上、林業の社会的地位向上、新規林業就業者数の拡大などを目的に、安全に木を伐る速さ、正確さを競う全国大会で、2年に一度開催されています。今回の講師陣は、日頃から熊本県代表として練習に励む林業従事者で、中にはくまもと林業大学校の卒業生もいます。実習は、ソーチェーン着脱競技についての説明から始まり、生徒たちもチェーンの取り付けに挑戦。競技を通してチェーンソーの構造などを学びました。さらに、伐倒競技や接地丸太輪切り競技も体験し、切り口を水平にしたり、追い口と受け口の高さを調整したりする難しさを実感していました。最後は、生徒代表と講師2人による枝払い競技のデモンストレーションがあり、この日の研修を終了しました。

 

くまもと農家☆ハンター・(株)イノP
稲葉達也さん

鳥獣害対策セミナーでは、野生動物の増加が及ぼす農地や森林への影響やICT技術を活用した最新の狩猟方法、ジビエの利活用などについて紹介しました。林業従事者が、増えすぎた野生動物を捕獲することで生態系のバランスが保たれ、里山の持続的な生活スタイルの発信ができます。参加した生徒たちには、ぜひ林業とハンターを両立させた「林業ハンター」を目指してほしいと思います。また、林業を取り巻く環境などにも目を向け、ここで得た知識を生かして成長してほしいです。

稲葉達也さん
稲葉達也さん

 

(有)マルユー
中丸雄一さん

チェーンソーの目立て研修、刈り払い機の基礎講習で講師を務め、高校生たちに基本的な操作方法や構造、注意点を教えました。今回の体験では、林業機械を使う楽しさを伝えることが目的です。まずは林業機械に慣れ親しんでもらい、その上で間伐作業などが山林環境保護につながっていることを知ってもらえればと思います。研修を受けた高校生たちが10年後、20年後も森林を守り続けられるよう、労働環境の整備やスキル向上など、現役の林業従事者が取り組むこともたくさんあると感じています。

中丸雄一さん
中丸雄一さん

参加高校生コメント①

私の住む地域でも鳥獣害問題は深刻で、高校の校有林にも捕獲用の檻が仕掛けられているので、学ぶ点が多く勉強になりました。まずは、人が暮らす地域に野生の動物を近づけないよう、草刈りやゴミの片付けなど、一人一人ができることから取り組んでいくことが重要だと感じました。また、捕まえた動物がジビエとして活用されていることを初めて知りました。チェーンソー体験では、エンジン音の迫力に圧倒されたのと、思ったよりチェーンソーが重くて真っ直ぐ切るのが難しかったです。山や地域をさまざまな災害から守れるよう、森林や林業に関する知識をこれからも学んでいきたいです。

 

参加高校生コメント②

チェーンソーの目立ての研修では、ベテランの方はヤスリがスムーズに動くのに対し、私たち高校生はぎこちなく、見た目よりずっと難しかったです。木をきれいに切るためには、目立てがしっかりできていないといけないと知り、整備の大切さを学びました。チェーンソーを使うのは初めてでしたが、スターターを引いてエンジンをかける作業に力が要り、女性には難しいと感じました。ただ、木に刃が入り始めてアクセルを開くと、力を入れなくても丸太が切れ、楽しさも味わえました。将来は林業関係の公務員を目指しているので、今回の研修で学んだことを今後の勉強に活かしていきたいです。

 

参加高校生コメント③

刈り払い機やチェーンソーを使ったのは、今回の研修が初めてです。刈り払い機のエンジン始動を中腰のままやろうとして、講師の方に注意を受けました。安全確保のためにも、しっかり屈んでエンジンをかける必要があることを学びました。また、学んだことを生かして、さっそく自宅の庭の草刈りなどを手伝っていきたいです。

 

参加高校生コメント④

将来は林業関係の職業に就きたいと思っており、今回の研修はその基本を学ぶのにとても役立ちました。鳥獣害対策は、学校でも箱わなの設置などに取り組んでいて、身近な情報として聞けました。全国規模で被害が広がっている鳥獣害に対して、林業従事者や私たちのように若い世代が果たせる役割があることも学びました。チェーンソーは初めて操作したので最初は恐る恐るでしたが、研修で教わったことを生かしてしっかりと操作を覚えたいと思います。林業は、担い手の減少なども言われていますが、自分が活躍することで社会課題を解決していきたいです。